「俺はおまえが好きだよ。夕映………ずっと昔から。」


 斎の澄んだ声、そしてハニカミながらそう口にする彼の顔。
 すべてが、自分に向けられている。それを理解した瞬間。

 夕映は、瞳かは涙が溢れだした。


 「おい………泣くなよ。泣く前に返事を聞かせてくれ。」
 「………だって。嬉しすぎて止まらないんだもの。………もう、言わなくたってわかるでしょ?」
 「………お前の声で聞きたいんだ。おまえは、俺の事、どう思ってる?」


 両手で夕映の涙を拭いながら、斎は優しく問いかけてくれる。そこには、いつもの俺様の彼はいなくて、優しくて紳士的な彼がいる。

 どんな彼も愛しくて、大切だ。
 けれど、その優しさが自分だけに向けられている事が、とても幸せだった。

 夕映は泣いたままのボロボロの顔で、彼の瞳をジッと見つめた。


 「斎が大好き。………ずっとずっと昔から好きだった。大好きだったの。」
 「…………知ってる。」


 斎は嬉しそうに笑うと、そのまま優しく顔を近づけた。夕映は自然と瞳を閉じて、彼の唇を受け止める。

 初めてのキスのはずなのに、戸惑いもなく斎の唇に触れた。
 それはずっとずっと夢に描いてた事。


 一目惚れをしてから、初恋を知り、ずっと片想いをしていた。


 それが叶ったのは、2人が大学1年生の夏の日の事だった。