「えっ……夕映ちゃん、もう彼氏と別れちゃったの?」
 「うん………あんまり上手くいかなくて。」
 「そうなんだ………。じゃあ、次だよね!夕映ちゃんなら、素敵な彼が出来るよ!」
 「……ありがとう、南ちゃん。」


 恋人と別れてから数日後。
 夕映は大学からの親友である、黒部南と食事に来ていた。
 フルーツパーラーで、フルーツのサンドイッチやパフェを食べながら恋愛話をしていた。
 そして、夕映が恋人と別れたと聞いて、驚きながらも励ましてくれる彼女に夕映は感謝をしていた。

 南は身長が高い夕映とは違い、小柄で少しふっくらとしている女の子らしい可愛い子だった。ボブの髪はふわふわしているし、目も大きくて、夕映は「女の子って感じがして守ってあげたくなるタイプ」の彼女を見て、羨ましいなと感じていた。
 けれど、それはお互いにだった事が、大学の頃の大喧嘩で判明している。
 あれがあったからこそ、今でも信頼し合える友達なのだと夕映も南も感じていた。


 「優しい感じの彼だったのにね。他に好きな人が出来たなんて………意外だったなぁー。」
 「それは、私に原因があるんだと思う。………いつまでも、彼を好きになれなかったから。」
 「………そっか。夕映ちゃんが夢中になれる人が見つかるといいね。」
 「うん………。」
 「夕映ちゃんのお父さんのパーティーとかでいい人見つければいいんじゃない?」
 「………パーティーかぁー………最近、断ってるなー。」


 昔は、華やかな世界に憧れて、父親のパーティーに出席していた。綺麗に着飾って出掛けるのが、お姫様になったようで嬉しかった。
 けれど、恋愛もビジネスであるのだと理解した瞬間に、華やかな世界が歪んで見えるようになったのだ。
 声を掛けられても「この人はどこの会社の人だろうか?」「利益のために声を掛けてるのかな?」など、心中を探ってしまい、楽しいはずのパーティーが、いつも疲れるだけになってしまっていた。
 そのため、社会人になってからはなかなか出席出来ていなかった。
 
 それに、パーティーには彼が来る可能性もあるのだ。
 ………目の前に彼がいたら、どうしようか。

 そう考えるだけでも、夕映はどうしていいのなと不安になってしまうのだった。