この事があったからだろうか。
高校の3年間、斎と全く会えなくても、英語の勉強を頑張ることが出来たのだ。
斎と会えなかったのには理由があった。
夕映も斎もテニスを続けていた。けれど、試合会場では会うことが出来なかったのだ。
それは斎が遠いところへ行ってしまったから。斎は高校から海外へ留学しに行ってしまったのだ。
それを知ったのは、とあるパーティーでの事だった。斎の両親が、わざわざ夕映に話しをかけてくれてのだ。小学生の頃から仲良くしてくれてありがとう、そしてテニスの試合の帰りに話しをしてくれて、ありがとうと言ってくれたのだ。
そのときに「斎は高校はアメリカに行っているんだ。また、帰ってきた仲良くてあげてくれないか。」と話したのだ。
それを聞いたときは、しばらく彼と話すことも、試合会場でテニスをする姿を見る事も出来ないのだと悲しくなってしまい、そして動揺もした。
けれど、少し時間が経つと、斎も頑張っているのだから自分も頑張らないとと思うようになったのだ。
そのお陰で成績はトップをキープしていたし、英語力も格段に上がっており、英語での会話はもちろん、読書だって普通に出来るようになっていた。
アルバイトではイベントでの外国人の通訳をしたり、英会話も習っていた。両親も「九条くんのお陰だな。」と、夕映の成長を嬉しそうに見守ってくれていた。
そして、大学生になった夕映は、散々悩んだが留学するのを止めた。翻訳家は確かに英語も勉強しなければいけないけれど、日本語の表現力も必要になるのだ。それは日本で勉強していた方が身に付くと考えたのだ。