20話「銀髪の王子様」




 依央と斎から逃げてしまった次の日。

 自分の斎への気持ちに気づいた日、夕映は全く仕事に集中力出来なくなってきた。
 考えてしまうのは彼の事ばかり。数ページやっと訳し終えたと思って読み直すと、誤字が目立ち、理解不能の文章が出来上がっており、今日は仕事が出来る日ではないと夕映は諦めた。
 こうやって自分のペースで仕事が出来るフリーの仕事でよかったと思い、夕映はコーヒーを入れてリビングのソファに座った。
 はぁーとため息をついたあと、一口コーヒーの飲む。普段はミルクを入れるが今日はブラックコーヒーにした。酸味と苦味が体を巡り、スッキリするのを感じた。


 頭がすっきりした所で、夕映は自分の気持ちを整理することにした。
 考えたのは、過去の斎との出来事や感情。
 どんな事をして、どんな風に彼を思っていたのか、思い出すことにしたのだ。
 そうすれば自分の気持ちも、斎の考えも少しはわかるのではないかと思ったのだ。


 「きっと昨日の夢のように、初恋は彼だったのよね。………小学生の頃はパーティーでよく会うようになったのよね。」


 そう思い出しながら、目を瞑った。

 斎との甘くて幸せで、そして苦く切ない過去を夕映は思い出す事にした。