「斎様…………。」
そう呟いて、星空にも負けないぐらいキラキラ光る銀色の髪と緑色の瞳を見つめていた。夕映とって、星よりも好きなものだった。
朗読会をした後。夕映は彼の事を忘れられずにいた。優しく語りかけるように話をしてくれた少し強気な王子様のような彼が初恋の人になっていたのだ。
その後のパーティーにはなるべく参加したいと父親に頼み、参加しては斎を探していた。けれど、なかなか彼に会える日はなく、諦めかけていたのだ。父親に彼の事を訪ねると、九条征伐の御曹子だというから驚いてしまった。
それから、彼とは生きる世界が違うのだとわかり、気軽に声を掛けてはいけない相手なのだと子どもながらに理解した。
そのはずだったのに、彼はこうやって声を掛けてくれた。それに驚いてしまったのだ。
「なんだ、その呼び方は。」
「お父様が、そう呼びなさいって。」
「やめてくれ。同い年だろ………俺は夕映って呼ぶからおまえも同じように呼べよ。」
「わかった。………斎?」
「あぁ。そうだ。」と言いながら彼は手を差しのべてくれた。その手を掴みながら立ち上がると、斎との距離が近くなってドキドキしてしまう。
「これ、おまえの靴だろ?」
「あ、うん。ありがとう。」
「裸足で歩くなんて、危ないだろ。」
「………でも、その靴だと足が痛くなるの。」
そう言って斎から靴を受ける。すると、斎は夕映の素足のままの足をしばらく見つめる。
すると、彼は突然芝生の上に座ったのだ。