きっと家についたら反省ばかりして、また泣いてしまうのだろう。
沢山泣いてから、どうするか考えよう。
自分に甘いのかもしれない。早く依央に謝らなければいけないのかもしれない。
けれど、今は自分がどうしたのかを考えたい。
そんな事を考えながら、見えてきた自分の住むマンションを見た。
すると、玄関の前に見覚えがある車が停まっていた。大学の頃にも、そして最近も乗った、あの車だ。
「どうして………。」
しかし、どうして今彼が自分の家の前で待っているのか。それがわからなかった。
このタイミングで、会いに来るなんて…………。
夕映は足早に歩いていた足を止めてしまった。
今、彼に会ってはダメだ。
こんな姿を見せたら、彼は心配してしまう。
数歩後退りして、また逃げようとしている自分に夕映は気づいた。
また、逃げるのか。
それで、何がわかるのか。
彼はきっと会いに来てくれたのだ。
逃げるのをやめたけれど、夕映はそれ以上歩く事が出来ずに、呆然と彼の車を見つめていた。
すると、彼の方が動いた。
車から降りて、夕映が立っている方に歩いてくるのだ。今日も仕事終わりなのか、黒のスーツを着て、髪も少しかきあげてピッシリとしていた。銀色の前髪が少し垂れて、モデル顔負けの色気を出していた。
けれど、暗闇からでも、彼の歩き方や目付きで斎、怒っているのがわかった。
「斎………。」
「おまえ、何やってんだよ。連絡もしたのに返事もないし、こんなところで突っ立って動かないし……。」
「あの………ごめんなさい。ちょっと手が離せなくて。」
スマホはデート中はほとんど触れてなかったので、連絡が入っていたのに気づけなかった。彼がだんだん近づいてきて、街頭の光で斎の顔がはっきりと見えた瞬間、夕映は気まずくなって、思わず視線を逸らした。
自分が彼の顔を見えているという事は、彼も夕映の顔が見えたという事だ。泣き腫らした顔を。