「……夕映先輩。僕はあなたが好きです。俺なら先輩を迷わせない。あなたが聞きたいことは全部話します。不安になったら、傍にいます。………だから、俺を選んでくれませんか。」
片手で夕映の腰を抱き止め、もう片方の手で夕映の顔を包み込みながら、依央は真剣な眼差しで、予告通りに夕映に自分の気持ちを伝えた。
それが、予想以上に心を揺さぶるものになってしまい、夕映は自分でも驚いてしまう。
その理由は、すべて斎の気持ちのためだと気づいてはいた。
………私は斎を苦しめているのだと。そして、自分自身も。
「僕は夕映先輩と別れてしまった日からも、ずっとあなたが好きでした。……あなたに会いに行ったのも相談なんかじゃなくて、夕映先輩に会いたかったからです。愛しています………俺を選んでください。」
依央は真剣な表情の中にも悲しみの顔があり、それを間近で見ている夕映は、彼が泣いてしまうのではないか、そう思った。
そして、その表情は少し前の彼と同じに見えて、その時の顔と被ってしまう。
私は彼らにそんな顔をさせてしまっているのだ。
そう思うと辛くなり、夕映は咄嗟に彼から目を背けた。
「……ご、ごめんなさい。私、どうしていいかわからない。」
「夕映先輩、逃げないでください。」
「………逃げたいよ。そんな悲しそうな顔とか怒った顔の依央くんから逃げたい。」
「………ダメです。昔と違うんです。もう、僕は先輩を逃がしません。」
彼の澄んだ、真っ直ぐな意思を感じる声が夕映の耳に届く。
そして、抱きしめられていた腕はほどかれその代わりに顔を支えられ、そのまま彼の唇が夕映の唇に触れた。
強引なキスは、短いキスの後に少しだけ離れたけれどまた、夕映の唇を塞ぎ、息苦しくなるほどに甘くて激しいキスが降ってきた。