しばらく町中を歩いていたが、しばらくすると静かな路地に着いた。
そして、依央が足を止めたのは大きな木に囲まれた小さな公園だった。辺りは真っ暗で、裏路地という事もあり、公園には誰もいなく、静かな雰囲気に包まれていた。
荒い呼吸のまま、依央の背中を見つめた。
依央は、やっと夕映から手を離してくれたけれど、こちらを見ようとしてくれなかった。まだ、怒っているのだろうか?
夕映は恐る恐る、彼に声を掛けた。
「依央くん………、どうしたの?」
「…………。」
「……やっぱり悩み事とかある?……それに、私が何かしちゃったかな?」
夕映は、彼の肩に手を伸ばそうとした。
すると、依央に少し触れた瞬間。
それは刹那な事だった。
夕映が気づくと、いつの間にか依央に抱きしめられていたのだ。それはいつものように優しい彼とは思えないほど、力強くて先ほど手首を掴まれた以上だった。
「えっ……依央くん……?」
「夕映先輩…………。」
熱のこもった低い声。
彼の色っぽい声が体に響いてきて、夕映はドキッと体を揺らした。
「………さっきの話、斎先輩の事ですよね。背中を押してもらえたっていうの。」
「………それは……。」
「夕映先輩は、いつも斎先輩を見ていますよね。理由は教えてくれない………けど、それなのに、斎先輩を好きなのかわからなくなって別れたり、距離を置いたりしている。」
「……依央くん………。」
彼の言葉は全て自分には当てはまる事だった。それを依央は自分よりもわかっているのだ。
話を聞いていくうちに、夕映はどうしようもない不安に押し潰されそうになっていく。自分がどんなにバカな事をしているのか。
相手を傷つけているのか。
斎は好きだと言ってくれている。それをわかって会ったり話しをしたりして時間を共有しているのに、最後には斎を拒んでしまうのだ。
彼の言葉は夕映の胸に突き刺さった。
フラフラする体を彼に預けて、泣きそうになりながら依央を見つめる。
もう、自分はどうすればいいのかわからなかった。