2話「いつも突然に」




 彼との再会はいつも突然だった。

 高校の全国大会で見た時。
 大学のサークルが一緒だった時。


 そして、このテニスのコートで出会った時。
 すべてが偶然で、突然な事だった。


 「会えるかもしれない。」と淡い期待はしている事もあったけれど、それでも本当に会えるとは思ってもいなかった。
 特に社会人になって、彼を間近で見るのはほとんどないと思っていたのに。



 松コーチが話していたように、夕映は彼がテニスをしているところをこっそりと見学する事が多かった。
 コーチの仕事が終わった後、ジムのテニスコーチの仲間と遊びで試合をしている事があるのだ。

 コーチ達や、ユースの子どもたち、そして習いに来ている人達がそれを楽しみに見ており、ギャラリーは多い。それに紛れて、夕映も彼を見てしまっているのだ。


 彼のテニスプレイは、初めて中学の試合で見た時から、夕映は彼のテニスに惚れ込んでいた。
 容姿が良いので、何をしても映えるのもわかる。けれど、彼のテニススタイルはとても綺麗で目を惹いた。
 強い玉を打つのに、それを感じさせない鮮やかな返しや、一つ一つの動作が洗練されていて、まるでフィギアスケートのように見えた。
 それを友人に話したら笑われてしまったし、「みんなと同じでしょ。」と言われてしまったけれど、夕映にとっては特別に見えていたのだ。