17話「逃げないで」
夕映の一言が原因だったのか。
依央は黙り混んでしまい、妙な雰囲気になってしまった。夕映はどうしていいのかわからず、おろおろしながらも持っていた本を元の場所に戻した。
「あの、依央くん……私なにか……。」
しちゃったかな?、と聞こうと思った。
けれども、その言葉を言う前に、依央に手首を掴まれて、そのまま彼に引っ張られるように歩き始めた。
依央の力はとても強く、当たり前の事だけれど夕映は彼が男の人なのだと改めて感じていた。
店の外に出るともう夕方になっており、薄暗い空に変わっていた。
人混みの中を、依央は縫うように足早に歩いていく。夕映が小走りになっているのにも気づかず、ただその場から早く離れたいという一心からなのか、それとも何かに遅れそうなのか、夕映には理由がわからなかったけれど、彼が焦っているのを感じていた。
「…………。」
そんな彼に声を掛ける事も出来ず、夕映は彼の後についていくしかなかった。
早足のせいで、呼吸は乱れていたし、ヒールをはいている足はガクガクし、そして彼に掴まれた手首もギリギリと痛んだ。
それに必死に耐えながら、依央の考えを必死に探そうとした。けれども、彼が今何を思っているのか、夕映にはわからなかった。