その時だった。
 夕映のスマホが小さく震えた。
 スマホの画面を見ると「依央くん」と表示されていた。


 「噂をすれば………斎くん?」
 「違うよ。斎は忙しくて連絡なんかマメに寄越さないの。今のは、依央くん。」
 「え、依央くんとも連絡取ってたの?」
 「うん。何か、相談したいことなるみたいで。飲み会の後、何回か会ってるんだ。」 
 「ふーん。夕映は、相変わらずモテるねー。」
 「何でそうなるの?」
 「なんでもない。それにしても、元彼2人かぁー…………ふふふっ。」
 「何にもないって言ってるのに。南ちゃん、何か楽しんでない?」
 「そんな事ないよー。」
 「もうっ!」


 南は含んだ笑い見せながら、夕映と一緒に微笑んだ。先ほどの苦しそうな表情がなくなり、夕映は安心しながら南とまた話を始める。
 



 けれど、彼女のあの表情と言葉の続きが妙に気になってしまったのだった。
 


 
 やはり、南はまだあの事を気にしているのだろう。
 もし、私が彼女の立場だったのならば苦しくて悲しかったと思う。
 南の思いに気づかないで舞い上がっていた当時の自分が今になっても許せなかった。
 それに彼も………。


 また、南を傷つけることになるかもしれない。もしかしたら、南はまだ………。
 だとしても、自分の気持ち、そして彼の気持ちが大切なのもわかっている。遠慮をするのも南を傷つける事になるのも理解しているつもりだった。


 だったら、私はどうすればいいの?


 夕映は自分がどうしたいのか。どうするべきなのか。もう、わからなくなっていた。

 ぐじゃぐじゃになった想いから逃げてしまいたい。
 そう思ったときに、現れたのが依央なのだ。
 彼ならば、また受け止めてくれるだろうか。甘えてもいいのかな。

 そんな事を考えながら………スマホを画面を見つめて彼に連絡をしてしまうのだった。