そんな中でも特に背が高く、目を惹く容姿の男性がいた。
黒のジャンパーに、白のジャージのパンツを履いた細めだけれども鍛えてると一目でわかる体つきをしていた。
そして、太陽の光を受けて銀色とも少し緑色が混ざった灰色にもみえる不思議な色をした髪色、色白の肌に小さな顔、スッとした切れ長の瞳は綺麗なライトブルーの色だった。
コートの近くを通った人達は男女問わずに、みんな振り返ったり、その場で立ち止まったりしており、視線を集めていた。
けれど、本人は慣れているから平然とテニスの指導をしているのだ。
「今日も見ていくの?九条コーチのプレイ。」
「はい……。彼のテニスしている姿はとても整っているのに、優雅で綺麗なので見たくなっちゃうんですよね。」
「そうだね。基礎がしっかりしているからこそのフォームだと思うよ。テニスはプロ級で、そしてかっこいい。それだけでもすごいのに、九条財閥の息子で、彼自身もいくつもの会社を持ってる。……すごい人だよね。」
「………そうですね。」
九条斎。
九条財閥は、誰もが知っている会社の1つで、マンションやショッピングモール、ホテルなどを日本中に展開している大手すぎる企業だった。
彼自身も、幼い頃から英才教育として語学だけではなく、株取引や会社経営を学生のうちから実践しており、今では大きな会社を運営している敏腕社長だった。
そして、テニスもプロ顔負けの腕前だけれど、プロになる事はなく、テニス界は「日本のテニス界の大きな損失」だと嘆いていた。
そんなことから、試合に出れない代わりにユースの子どもの指導を斎がすることになっていたのだった。
そんな有名すぎる斎が、夕映の元恋人なのだった。