「………なんでなのか、わからないけど……。斎からの連絡を待っていた自分がいるの。」
『それで?』
「………だから、電話が来て安心したけど。でも、もっと早く電話がほしかった。」
彼に優しく問われると、素直になれる。
それは昔も今も同じのようだった。
夕映の答えを聞いて、小さく息を吐きながら、少し困ったような声で斎が返事をした。
電話越しで顔が見えないけれど、今、彼がどんな顔をしているのか。夕映には容易に想像出来た。
困ったように、眉を下げて優しく子どもをあやすように笑うのだ。
慈愛に満ちたような、そんな優しい微笑みで、それを見るだけで夕映はとても幸せな気分になるのだ。
そして、それは今も同じだった。
『そうやって言えばいいだろ。』
「そう、だよね………。」
『じゃあ、今日連絡するまで、一人で悲しく過ごしてたって事か。』
「そんな事ないよ!依央くんとお茶したりしてたし。」
『…………依央と?』
素直になれてホッとしたのもつかの間。
口が滑って出はないが、夕映はまた口を滑らせて余計なことを言ってしまったようだった。
斎の声が、先程よりも幾分低音になっていたのた。
それは、彼が機嫌が悪くなった証拠でもあった。