「………どうしたの?電話なんかくれて。」
『別に。』
「…………忙しいなら無理しなくていいよ。」
『なんだよ。………何怒ってるんだ?』
「怒ってなんかない。」
斎と話していると、どうしても怒ってしまう自分がいる。彼の前では女の子らしくしようとかは思わないけれど、異性から見て可愛くはないだろうなと自分でも思ってしまう。
けれど、何故か彼の電話を待っていた自分への苛立ちと、告白までしておいて連絡もしないで思わせ振りな態度を取る彼への怒りが、態度に出てしまうのだと考えると、我慢する必要もないな、とも考えてしまう。
そんな怒っている理由を夕映は考えているというのに、斎は全くいつも通りの返答をしてきたのだ。
『なんだよ。……おまえ、俺から連絡くるの待ってたんだろ。』
「なっ!?そんなことっっ………。」
『あるだろう?だから拗ねて、怒ってるんだろ。』
「そんなことないよっ!」
図星をつかれて焦ってしまう夕映をよそに、斎はいつも通りの冷静な声だった。
『わかるさ。お前の事なら。』
その堂々とした声は、夕映の体にすーっと染み込んでくるように馴染んだ。
周りから見たら押し付けられているように感じられるような言葉かもしれない。けれど、夕映には違って感じられる。
なんでこの人は自分の気持ちをわかってくれるんだろう。そして、それを彼らしく教えてくれる。素直になればいいのに、と。
自分の気持ちにまっすくで思ったことは言葉にする彼らしい態度だった。
そして、夕映はそんな斎の事をとても尊敬していたのだった。
私も、自分の気持ちに素直になりたいと。