はーっと大きなため息をつきながら。
 冷めてしまったミントココアを一口飲んだ。

 
 今日は、今度仕事で依頼をされた、雑誌の海外アーティストのインタビューの資料を受け取りにその会社まで来ていた。
 打ち合わせもすぐに終わり、家の近くのお気に入りのカフェで一息ついていたのだ。この店のミントココアは爽やかだけど、しっかりと甘味もあり、夕映のお気に入りだった。

 店内は空いていたので、窓側の席に座ることが出来た。
 外は大通りになっており、人が行き交っている。その様子をボーッと見つめながら考え事をしていた。
 頭の中にあるのは、もちろん仕事ではなく、斎の事だった。

 けれど、少し頭を働かせて考えていても結果が出るわけでもなかった。
 もう一度、ミントココアを飲んでため息をついた。


 「ため息ついて、どうしたんですか?夕映先輩。」
 「え………。」


 後ろから急に声を掛けられ、斎は驚き振り返った。
 すると、そこには人懐っこい笑顔で微笑む背の高い男性が立っていた。


 「依央くん!」


 静かな店内で、大きな声を上げてしまい、咄嗟に口を手で覆い、小さくお辞儀をする。
 

 「先輩、隣座ってもいいですか?」
 「うん。どうぞ。」


 偶然の出会いに驚く夕映をよそに、依央はいつもと変わらない様子だった。
 店員がメニューを持ってきてくれたので、彼はその場でコーヒーを頼み、夕映ももう1つ同じミントココアを注文した。
 

 「依央くんと、こんな所で会うなんて……ビックリしちゃった。」
 「偶然ですね。……と、言いたいところなんですけど、南先輩に夕映先輩がよくこの店に行っていると聞いたので。まさか会えるとは思いませんでした。」
 「そうなの!?」
 「………ここ毎日来ちゃいました。このコーヒーがとても美味しくて。」