9話「ミントココアとコーヒー」





 あれから家に帰って落ち着くと、斎はやはり強引だなと思ってしまう。
 それが嫌じゃないのは、自分が少し変わっているからなのかとも思ってしまうけれど、1度本気で好きになった人なのだ。
 別れた過去があっても、その気持ちは変わるものでもないのかもしれない。


 彼と別れた時は、彼の気持ちがよくわからないままだった。
 何回聞いても、彼は答えてくれなかった。
 それが悲しくて、信用されてないようで辛かった。
 彼を嫌いになるのが嫌だった。

 だからこそ、再会して「やり直したい。」と言われるのはとても嬉しかった。
 一方的に別れを告げたのは自分なのに、まだ、少しでも自分を気になってくれていたのだろうか。夕映はそう思えるのが照れくさくも、幸せだった。



 「………だったら、昔の事、しっかり話してくれる?斎……。」


 けれど、斎とまた付き合う前に知っておきたい過去があった。
 それは、斎と夕映が別れるきっかけになった出来事だった。

 その事を斎に聞いてしまうのは簡単だった。だが、彼は頑なに教えてくれなかった。
 どうしてあんな事をしたのか。
 それを知りたいだけなのに。

 斎を信じたいのに信じられずにいるのは、そういう理由があったのだった。