「……当たり前だろ。……それに、あの頃のおまえも可愛かった。」
得意気に言う彼は、こんな台詞を当たり前のように言うのだ。それが彼には似合ってしまうから不思議だ。
その余裕のある微笑みを見れて嬉しいと思いながらも、予想外に自分も褒められてしまい、夕映は思わず照れてしまう。
「なんで、そんな事言うの……恥ずかしいよ……。」
「当たり前だろ。可愛いって思ってるのは本当だし、それに………。」
そこまで言うと、斎は夕映の耳元に近づいてきて低い声で囁いたのだ。
「口説いてるんだ。」
「っっ!」
一際、艶のある声で囁いた言葉に、夕映は身が震えてしまい、咄嗟に彼から体を話した。
「ま、まだそんな事を言ってるの?」
真っ赤になってしまった耳を手で隠しながら、焦った様子で彼に強めの口調で言うけれど、斎はいつものよつに冷静に冷静に返事をするだけだった。
「本気だからな。あぁ、連絡とってた女とは切ってきた。」
「なっ………付き合ってたのに、別れてきたの?」
「付き合ってない。遊んでただけだ。」
「……そんなの、相手が斎をどう思ってたか、わからないじゃない。」
「……俺は別に好きなわけじゃないから、そういう事も言ってない。お互いわかってたから、すぐに切れたんだろ?」
本気の恋ではなかったのだろう。
少しだけホッとしてしまった自分もいたけれど、心の大半は悲しい気持ちが占めていた。
斎が遊び慣れている様子だったことに驚き、そして、本当の恋愛をしようとしていないのに切なくなったのだ。
相手の気持ちは考えてないのだろうか?
……昔と、変わっていないの?
そして、もう1つ思う事。
私も遊び相手のひとりなの?