7話「2度目の告白」
やっぱり突然目の前に表れる人だなと思った。
いつから居たのか、後ろには憮然とした態度の斎がいたのだ。
「どうしてここに………。」
「たまたま、と言いたいところだが。おまえ、ここの図書館好きだっただろ。……居るかと思ったら、本当に居て驚いた。」
「私を探しにわざわざ来たの?」
「……俺だって休みぐらいあるからな。休みに図書館に来たっていいだろ。」
そう言った後、当然のように夕映の席の隣に座った。
そして、テーブルに置いてあった、本を手に取って懐かしそうに表紙を眺めていた。
「この作家の本、懐かしいな。………おまえ、英語読めなくて、泣きそうになってたし。」
「………斎、覚えてたの?」
「覚えてるだろ?お前と初めてしっかり話した時だからな。挨拶は何回かしてたけどな。」
「そっか………。」
「あの時は、まさかお前が同い年だとは思わなかったな。」
「私だって、斎は年上のお兄さんかと思ってたよ。」
「だから、ビクビクしてたのか。」
斎はくくくっと笑いながら、昔を思い出しているようだった。
怖がっていた記憶なんて、夕映にはなかった。けれど、物語の王子さまのような人と初めて話したので緊張していたのだろうと、思った。
それに、英語をしゃべれないのでショックを受けていたんだと、夕映は薄れていく当時の記憶を思い出していた。
「でも………優しいお兄ちゃんだと思ってたよ。英語を話してる斎もかっこよかった。」
懐かしみながら思わずそんな事を言ってしまった。
彼が目の前にいるのに、恥ずかしい事を話してしまったと夕映は少し後悔してしまいそうになった。けれど、それは次の彼の言葉で変わることになる。