焼きたてのパンやコーヒー、卵にサラダ、そしてフルーツなどがテーブルに綺麗に並べられた。
そのおいしそうな香りを嗅ぐと、昨日はお酒ばかりであまり食べていなかったので、お腹がなってしまいそうだった。
「九条様からのメモもこちらに置いてあります。」
「ありがとう。」
「それでは、ごゆっくり。失礼致します。」
ゆっくりと優雅に礼をしてから退室したスタッフに礼を言う。
九条ほど大きな財閥でもないけれど、夕映も社長令嬢だ。こう言った対応には慣れていたので物怖じせずに対応していた。
スタッフが帰った後。
夕映は少しドキドキしながら椅子に座った。斎からのメモ書き。何が書いてあるのかわからなかったけれど、昨日別れた後に、書いたのだろう。
あんな事があった後だ。
彼の言葉が気になってしかたがなかったので、ゆっくりと手紙に手を伸ばした。
小さな紙に書いてあった文字。
綺麗な字体で、短く書かれていた。
『10時までに連絡よこさなかったら、すぐにホテルに行くからな。』
その文章を見て、夕映は唖然としてしまった。
「なっ………斎が、勝手に名刺押しつけたくせにー!」
夕映はそう叫んだ後、むしゃくしゃする気持ちのままにルームサービスを食べ尽くした。普段は食事のマナーはしっかりと守るタイプであったが、片手でパンを持ち、もうひとつの手でコーヒーやフルーツを食べていた。
それぐらいに、彼の横着な態度は夕映を怒らせてしまったのだ。
「急にやり直そうって言われて、今の恋人と別れろとか言うし……まぁ、別れたばっかりだったけど。……それして、勝手にキスして抱こうとして、断ったら名刺だけ渡して連絡よこせなんて。我が儘すぎるわ!私が斎を好きだなんて言ってないのに!!来るなら勝手にホテルに来ればいいんだわ。」
残りのコーヒーを飲み干し、カツンッとコーヒーカップをテーブルに置く。
そして、窓から見える小さくなった街並みを眺めていると、先ほどまでの高まった感情が、何故かすっと落ち着いてきた。
そして、ぼーっと考えた後独り言を洩らした。