6話「メモと昔の出会い」
コンコンッと音がする。
どうしてチャイムを鳴らさずにノックしているのだろう。
それにしても、こんな朝早くに誰が訪ねて来たのだろうか。
いつもよりぐっすりと寝れたような気がするが、体はまだ眠かった。
眠い目を擦りながら起きるとそこは、いつもとは違う空間だった。
高い天井に、大きな窓。そこから差し込んでくる光はいつもより強い気がする。
夕映の部屋の家具よりも何倍も豪華で、そして寝ているベットも大きくふかふかだった。
斎の部屋に似ているな。そんな昔の事を思いながら、ボーッとその部屋を眺めた。
すると、またドアの方からトントンッと小さな音が聞こえた。
パッと目を覚まして辺りを見渡す。
そうだ。昨日は、斎がホテルの一室に泊めてくれたのだと思い、焦って時計を見る。
けれど時計は8時を差しており、チェックアウトの時間ではないはずだ。
おかしいなと思いながらも、夕映は着ていたガウンと髪を整えながら、ゆっくりとドアを開けた。
「おはようございます、水無瀬様。ルームサービスのモーニングをお持ちしました。」
「え………私、頼んでないですけど。」
「昨夜、九条様よりご注文がありました。8時にルームサービスとメモをお渡しするように、と。」
「手紙……わかりました。お願いします。」
夕映はホテルスタッフを部屋に招いて窓側の席に食事を置くように頼んだ。