スタッフルームに入り、斎と合流した後は、タクシーに乗ってそのレストランから離れた。
 心配するであろう南だけには「ごめん、先に帰ります!」と連絡をしておいた。


 「駅前までお願いします。」
 「どこへいくの?」
 「近くのホテル。」
 「えっ……!?」
 「の、バーだけど。………おまえ、何期待してんだよ。」
 「っっ、もう!そういうところも変わらないんだから。」


 からかわれいるのだとわかって、夕映は抗議の声を上げる。
 けれど、こうやって彼がいじって、夕映の反応を見て笑う。そんなやり取りがたまらなく久しぶりで心地のいい気分になってしまっていた。
 もう好きでもない相手なのに。
 元恋人との懐かしさのせいなのだろうか。



 ホテルの最上階に近い階にあるバーは、とても落ち着いた雰囲気で、そこから見える夜景も素晴らしかった。

 そこでも2人の話はつきずに、遅くまでお酒を飲みながら話をした。
 斎の低音の声が、楽しそうに話すのを聞いているだけで、夕映は嬉しくなっていた。
 そのせいなのだろうか。


 「夕映、少し飲むペースが早いぞ。おまえ、そんなに強くないだろう?」
 「んー、だってここのお酒おいしいんだもん。それに楽しいし。」
 「………酔っぱらい。」
 「いいの。楽しいから。」


 爽やかな海のような青色のカクテルを飲もうとした瞬間に、そのグラスを斎が奪い取り、飲みほしてしまった。


 「あ、私の………。」
 「今日はもうおしまいだ。」
 「……そう、だね。もう、帰らなきゃね。」