34話「夢が叶う朝」







 幸せな夢を見ていた。
 けれど、目を開けてしまえば、その夢は一瞬のうちに忘れてしまうのだ。けれど、気持ちだけは満たされている。そんな夢を見たのは久しぶりだった。

 理由はわかっている。
 隣で眠る、彼のお陰なのだと。


 すやすやと眠る、銀髪で整った顔立ちの斎。
 昨夜は、何度も夕映の名前を呼び、切なげな表情で、お互いに気持ちをぶつけ合い、そして快楽に与えてくれた彼。我慢していた身体は、1度熱を帯びるとなかなか冷めてはくれずに、長い時間抱き合っていたはずだった。



 そして、気がつくと朝になっていた。
 夜景が綺麗だった窓には、いつの間にか薄いカーテンがひかれており、朝になっているのか明るくなっている。そして、夕映は斎が着ていたシャツを着ていた。寝ていたせいでシワになっている。夕映が寝てしまってから、斎が着せてくれたのだろう。
 隣の彼は裸のようで、鍛えられた肩が見えていた。


 「幸せだな………。」


 夕映は斎の寝顔を見ながら、彼を起こさないように小声で呟いた。
 誤解も解け、好きな人に好きと言える事。そして、こんなにも傍にいられる事がとても幸せだった。

 夕映はしばらく彼の寝顔を見つめた後、斎を起こさないようにベットを抜け出した。

 彼に朝食を作ろうとキッチンに行ったが、ほとんど食材が入っていなかった。斎は外食が多いのだろうか。パンと少しの調味料しかなく、夕映は朝食作りを断念した、

 広いリビングに行くと朝日が差し込んできており、とても明るい部屋になっていた。
 大きなソファの向かえには、本棚に囲まれたテレビもあった。