「おまえも、俺の傍から離れたくないんだろ?」
「うん………。」
額をくっつけ、鼻同士が触れ合いそうな距離だ、斎は微笑みながらそう言う。
夕映は恥ずかしそうに頷くと、斎はニヤリと微笑んだ。
「じゃあ、今日はおまえを帰さないからな。」
そう言うと、斎は夕映の手を握りしめ少し早めに歩き出した。向かう先はもちろん、斎の住むマンションだ。
夕映はその先の事を想像し、頬を染めながらも、斎をもっと感じたくて小走りで彼の後を歩いた。斎の手はとても熱くなっていた。
エレベーターに乗ると、夕映は斎の腕にギュッと抱きついていた。この後の期待と、少しの緊張のためだった。
斎はそれを嬉しそうに見つめ、「あと少しだから我慢してろ。」と優しく夕映の頭を撫でた。
斎の住む部屋は最上階に近い高層階だった。
フロアには数少ないドアしかない。一つ一つの部屋が広いのがわかった。
その奥の部屋に向かい、斎は鍵でドアを開けて夕映を部屋に招いた。
夕映は小さな声で、「お邪魔します。」と言うと、玄関に入りパンプスを脱いだ。
そして、待っていた斎を見ると、夕映はドキッとして体が固まってしまった。
彼の熱を帯びた瞳は少し潤んでおり、色気を感じてしまったのだ。
「………俺の部屋におまえがいる。何だか信じられないな。」
「斎、わ、私……。」
「ダメだ。もう逃がさないって言っただろ。」
そう言うと先ほどの優しく触れてきたのとは一転し、少し乱雑に夕映の腕を掴むと、引っ張るようにして斎は夕映を引いた。
夕映は彼についていくしか出来ずにいると、斎に連れていかれた場所は、想像通りベッドルームだった。
大きなベットに、夜景が綺麗に見える大きな窓。ベットの横には机と椅子があり、机に数冊の本やパソコン、ペンなどが置かれていた。
夕映が、呆然とその部屋を見ていると、斎は夕映を抱き上げて、そのままベットに下ろした。
「い、斎………。少し急すぎるよ………。ほら、あのシャワーとか。」
「もう限界だって言っただろ。」
「そんな………。」
顔を真っ赤にしてオロオロする夕映の上に跨がり、ベットに片手をついて、夕映の顔をまじかで見つめた。