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 南からの電話を終えた後。
 斎は、すぐに車を走らせていた。



 今日は夕映の誕生日だ。
 この日のために、斎は仕事の合間を縫って、完成させて物がある。
 それを夕映に早く見せたい。彼女が喜ぶ顔が見たい。それだけで寝るまもなく作り上げてきた。
 そして、誕生日当日。意気込んで夕映の家に来たが、夕映はいなかった。

 車の中で一時間待ったが、彼女は帰ってこない。
 前に見た、夕映と後輩である伊央が手を繋いで歩く姿が頭をよぎった。
 伊央と付き合い直す事にしたのだろうか。それもありえる話だ。
 斎は夕映に「もう会いに来ないで。」とまで言われてしまっているのだ。

 その言葉は、斎自身に大きな傷を与えていた。
 そんなにも彼女に嫌われているとは思わなかった。けれど、最後に見た悲しげな顔を思い出すと、もう彼女と恋人になれないのではないか。そう思ってしまうのだった。


 「はぁー………。あいつが俺のプレゼントを喜んでくれるはずもないって事なのか。」


 ため息と共に、そんな言葉が自然と出てしまった。斎は、ハンドルに顔を埋めて、もう一度大きくため息をついた。
 そんな時に南からの電話が来た。



 南が昔の話を夕映にした事。
 そして、夕映が自分に会い来ようとしている事を知った。斎は、それを聞いて内心では大きく安心していた。


 夕映が本当の事を知った。
 それをわざわざ南に聞いたと言う事は、ずっと自分の事を考えてくれたのではないか。そう思ったのだ。
 そして、理由がわかってからすぐに自分に会いにきてくれるのだ。斎は、今すぐに夕映に会って抱き締めたくなってしまう。

 これから起こる事に期待してしまう。



 夕映は今、どこに向かっているのだろうか?
 スマホには連絡もない。
 もう日付が変わる約一時間前だ。きっと会社に行くこともないだろう。
 そうなると、場所は1つ。斎の自宅だった。
 もちろん、彼女を連れていった事はない。けれど、話の中でどこに住んでいるかを伝えた覚えがあるのだ。

 きっと、自宅に向かってるはずだ。
 斎はそう確信して、ハンドルを強く握りしめて車を動かした。



 今から会うであろう愛しい彼女を想い、斎は口元が緩んでしまう。


 「次は絶対に離さない。待ってろよ、夕映。」