南は、スマホを取り出した。
そして、ここ数年使っていない電話番号を表示した。
スマホを画面を見るだけで、胸が激しくなり緊張し、不安になる。
けれど、南は繋がることを祈り、通話ボタンを押した。
忙しい人だから、すぐには出ないだろう。思っていたけれど、案の定すぐに電話が繋がった。
『………南?』
「あ、繋がった………。」
『何言ってんだよ。おまえが電話かけてきたんだろ。』
「そうなんだけど。繋がらないかと思ってた。」
『………久しぶりだな。どうした?』
電話越しから懐かしい声が聞こえる。
少し前に飲み会で会ったものの、南が避けていたため1度も会話を交わすことはなかった。
久しぶりに聞く彼の声は、少し低音になり大人の雰囲気が出ていた。
「今、夕映ちゃんと会っていたの。……昔の話しもしたよ。斎くん、どうして話さなかったの?理由を言えば、夕映だってわかってくれたと思うよ。」
斎は夕映が好きなのだ。
南にキスして欲しいと言われたから、「嫌いだ。」と言ったと伝えてしまえばすむ事だった。
それなのに、夕映には言わなかった。
それが南にはわからなかった。
『俺が言ったって意味ないだろ。おまえから話さないと、夕映が傷つくだけだ。』