けれど、1つだけ思えたこと。
それは、南と斎がそんな事をしていたら……という気持ちだった。
斎は自分と別れたあとも違う女性と関係を持ったはずだ。それも理解している。
それを考えるだけで、夕映は切なくて仕方がなかった。南とそんな関係になっていた。そう思うと他の女性と同じか、それ以上に胸が苦しくなったのだ。
………その気持ちを、南はずっと感じていたはずなのだと、夕映は実感したのだ。
「バカな事をしたって思ってる。けど、あの時は好きな気持ちが抑えられなかったの。………でも、あんな事を言わなければ嫌われて終わるなんてなかったのに……友達としては続けられたはずなのに。そして、夕映ちゃんが恋人なのに、こんな事をいってしまって後悔ばかりした。言わなきゃいけないって思ってたけど、夕映ちゃんとの関係が終わると思ったら言えないまま、ずるずるここまできてしまった。そして、斎くんと恋人になる障害にもなってたなんて……本当にごめんなさい。」
「…………。」
「………今まで仲良くしてくれてありがとう。こんな裏切るような事してしまっていたけど、夕映ちゃんとの時間は大切だったよ。」
南がまるで別れの言葉のような台詞を言っている。
そう思った時。夕映は咄嗟に南に向かって両手を伸ばしてた。そして、その両手で少し強めに南の頬を包むように叩いた。
パチンッという乾いた音が部屋に響いた。
「………痛い………んーっ!!」
「………痛くしてるのっ!」
その後、頬を摘まんで引っ張る。南は困惑した顔と、それを受けいるような何故かホッとした表情で夕映を見ていた。