「夕映ちゃん、お誕生日おめでとう。」
「ありがとう、南ちゃん。」
この日は、夕映の誕生日だった。
仕事が終わってから、南が自宅に誘ってくれたのだ。オードブルを買ってきたり、南が作ってくれたデザートを食べながらゆっくりと過ごしていた。
南は誕生日プレゼントまで準備してくれており、夕映は幸せな時間を過ごしていた。
社会人になってから恋人と過ごす誕生日はほとんどなかった。恋人が出来ても長続きしない夕映は誕生日にお祝いしてもらえても、本当にこの人と一緒でいいのだろうか?と、考えてしまい純粋に喜べなかった。
だからこそ、大切な人にお祝いされる事が心地よく幸せだった。
「南ちゃんのケーキおいしいね。甘さ控えめだし、フルーツもたくさんだし、いっぱい食べられそう。」
「よかった!いっぱい作ったからよかってらおうちに持って帰ってね。」
「ありがとう。嬉しいなー。」
南が好きな酸味のあるコーヒーと、フルーツケーキはとてものよく合い、夕映はついつい多めに食べてしまっていた。
体が甘さを欲していたのか、幸せな気持ちになり自然と頬が緩んだ。
それを見つめている南は何故か真剣な表情だった。
その視線に気づいた夕映は、不思議に思い彼女に問いかけた。
「南ちゃん、どうしたの?難しい顔をして?」
「………夕映ちゃん。今日は、本当だったらテニスの日だよね?休んでよかったの?」
「あ、うん。ちょっと体が疲れてて……今はテニスお休みさせてもらってるの。」
「………そうなんだ。夕映ちゃんのお祝いしたいって連絡してたとき、今日が予定がないって聞いて驚いたんだよ。」