午後の講義を集中出来ないまま受け、夕映は斎に「少し体調が悪いから部活を休む。」と言ってそのまま自宅に帰った。斎は心配した様子だったけれど、今日は外せない仕事の打ち合わせがあったようで、「何かあったら連絡を寄越せよ。」と、心配しながら仕事にいってしまった。
けれど、夕映にとっては都合がよかった。
今、斎と一緒にいる時にどんな顔をすればいいのかわからなかったからだ。
家に帰ってから、夕映は南にプレゼントするはずだったドレスを抱き締めたまま、部屋のソファで呆然としていた。
「南ちゃんも斎が好きだったなんて。気づかなかった………南ちゃん、ずっと苦しかっただろうな。」
南の前で斎の話しをしなくても、構内で一緒に歩いていたり、朝一緒に大学の来たりしているのを見ているはずだ。
好きな人に恋人が出来た。それが友達だというのは、とても苦しいはずだと、夕映は逆の立場になって考えるだけで切なくなった。
南はいつから彼が好きだったのだろうか。
もし小学生の頃だとしたら、とても長い期間だ。その間、ずっと片想いをしていたのだろうか。
南の気持ちに気づかずに、彼女を傷つける態度をとってしまった自分は悪いなと夕映は思っていた。
けれど、譲れないものもある。
「南ちゃん、私もずっと昔から斎に憧れていたんだよ………。」
それは、もちろん大好きな斎だ。
斎と付き合えることになったのは、奇跡のような事かもしれない。けれど、斎と恋人になって夕映は幸せだった。
そんな彼を友達が好きだからと言って、別れようとは思えなかった。
「私も頑固なのかな……。」
苦笑しながらも、先ほどまで彼に会えないと思っていたのに、もう斎に会いたくなっている自分がいた。
「明日、ちゃんと南ちゃんとお話ししよう。」
夕映は、ずっと抱きしめていたドレスをテーブルの上に置いた。
それを見つめながら夕映はそう決心をした。