3話「懐かしい背中」





 斎がすぐ近くにいる。
 こんなにも近くにいるのは、恋人同士だった以来だろうか。
 まだ、相手はこちらに気づいていない。
 それなのに、鼓動が激しくなり、顔が火照ってきたのがわかった。

 呆然としてしまっていた夕映を見て、南は焦った様子で話しを掛けてきた。


 「夕映ちゃん、ごめんね。大学の集まりって言ってたんだけど、実は部活の集まりだったなんて………。夕映ちゃん、部活の集まりにはいつも来てなかったから、みんな来てほしがってて私が頼まれたの。」
 「そう、だったんだ………。南ちゃん、テニス部じゃなかったのに、こんな事させてごめんね。」
 「………夕映ちゃん、自分が会いたい人としっかり会って話した方がいいよ?」
 「南ちゃん………?」


 南はニッコリと笑うと、幹事らしき人に話しを掛けていた。
 南が何を言いたかったのか。
 それは、自分でも気づかないフリをしていたものなのだと、すぐにわかった。


 「あ、夕映が来たぞー!久しぶりだな。」
 「本当だ。変わらず美人だな。」
 「みんな、お久しぶりだね。」


 夕映の登場に気づいた部員達が、次々に声を掛けてきた。久しぶりの雰囲気に、オドオドとしながらも、懐かしい仲間と話すのが少しずつ楽しくなっても来ていた。