「斎くんに選ばれたからって、バカにしないでよ!」
 「そんな事、思ってないよ!?」
 

 バンッと小さな衝撃が胸の辺りに感じた。
 そして、何かが床に落ちる音も聞こえた。
 夕映が下を向くと、先ほど南にあげたドレスの入った紙袋が夕映の足元に落ちていた。

 それを見てすぐに何が起こったのかを理解できた。
 南が、その紙袋を夕映に投げつけたのだと。


 「……ずっと昔から斎くんが好きだったのに。どうして大学から一緒になったあなたが選ばれるの?!地位だってそんなに高くないし、頭だって私よりよくない。………ずるいよ!!」
 「南……ちゃん………。」
 「………っっ………そんなドレスなんていらない。2人が一緒にいるパーティーなんて行きたくない………。」


 ボロボロと涙を溢しながら、キリッとした鋭い瞳で夕映を見つめる南の表情。それは、夕映が見たことがない彼女の表情だった。
 南は、呆然とする夕映と落ちたドレスを残して走り去って行った。


 夕映はしばらくその場から動く事が出来なかった。