「もう時間は戻せないんだ。今日は諦めろ。」
「………わかった。でも、南に連絡しないと。」
「あー……確かにスマホが何回かバイブ鳴ってたな。」
「えっ!?」
「いいから早く着替えろ。そんな格好だと………また襲うぞ。」
「あ…………。」
気づけば、夕映の格好は斎が着ていたシャツ1枚だけだったのだ。それで、ベットから出ようとしていた事を思い出し、夕映は慌てて布団で体を隠した。もちろん、顔は一瞬で真っ赤になっている。
「着替えるからっ!」
「わかった。リビングでブランチにするから早く来いよ。」
「うん、わかった。」
「シャワーも使うなら使っていいから。」
「……ありがとう、斎。」
何から何まで準備をしてくれる彼にお礼を伝えながら、洋服に着替えた。
そしてすぐにスマホを確認すると、案の定、南から数件の電話が来ていたのだ。
今は昼食の時間のはずなので、南も出てくれるだろうと思い、すぐに電話を掛けることにした。すると、すぐに電話が繋がった。
「南ちゃん。今日は連絡出来なくてごめんね。」
『夕映ちゃん。連絡ついてよかったよ。どうしたの?体調悪いとか?』
「ううん。………ちょっといろいろあって。今から行きたいんだけど。少し離れたところにいて………。」
『え、デートとか?』
「えっとー、斎の実家に来てて……….。」
南の反応に、夕映は少し驚いてしまった。
いつもの南は、恋愛の話や斎の話を自分からすることがなかったのだ。あまり、恋愛の話が好きではないのだと思っていたので、斎との話しもほとんど彼女にはしていなかった。
それなのに、南からデートと聞かれてしまったのだ。それに対して夕映は隠すつもりはなかったが、少し恥ずかしくなりながらも自分の現状を伝えた。
すると、何故か南が黙り込んでしまったのだ。
「み、南?どうしたの………。」
『斎くんの実家って、九条家だよね。……もうご両親ともお会いしてるんだ………。』
「斎のご両親とは昔から知り合いだよ。」
『そうなんだ…………。』
「…………南、」
どうしたの?と、再度聞こうとした時だった。