25話「お買い物」




 「ん………斎……。」


 まだ眠い目を擦りながら、ゆっくりと瞼を開く。すると、そこには愛しい人が、ベットに座り、こちらを優しい視線で見つめていた。


 「やっと起きたか。随分熟睡してたな。」
 「うん………まだ、眠い……。」
 

 斎が夕映の頭を撫でる。それがとても心地よくて、またウトウトとしてしまう。
 すると、斎はクククと笑いながら、「二度寝するな。」と言って、頭を手のひらで優しく叩く。そんな些細なやり取りが、幸せな時間だ。


 「買い物行く時間なくなるだろ。」
 「買い物って大学行かなきゃいけないんだから……。」
 「おまえ……もう昼前だぞ?」
 「…………えっ!?」


 斎の言葉で穏やかな朝が一転してしまう。朝でも穏やかでもなく、もう昼間で完璧に寝坊していたのだ。


 「い、斎ー!何で起こしてくれなかったの?」
 「……別にいいだろ?1日ぐらい。おれら今まで真面目に出席してたんだから。」
 「でも………。」


 真面目な夕映は、体調が悪いわけでも用事があったわけでもないのに、大学を休むのに抵抗があった。そのため、もうとっくに講義が始まっているのに、サボってしまった事に納得も出来ず、後悔していた。
 そんな夕映を見て、斎は苦笑しながらも、夕映の服を差し出してきた。