プロローグ
彼の屈託のない笑顔が好きだった。
幼い頃に初めて彼を見たときは、とても綺麗に笑う男の子だと思った。
神秘的な容姿の彼が微笑むだけで、妖精や天使のように見えたのだ。
けれど、それは大人のような固まって感情のない微笑みで、見ていて辛くなるようだった。
そんな彼と、初めて話をした時。
始めはみんなと同じように笑っていたけれど、ひょんな事で彼が声を出して笑ってくれたのだ。
それは、子どもらしい心から楽しいと思っている、純粋でのびのびとした笑顔だった。
その笑顔を見た時から、私は恋に落ちていた。
初めて好きになった男の子。
それはとても特別で、大切な出会いだった。
昔も、今も………そして、きっと未来も。
ずっとずっと、そう思っていた。
けれど、いつからだろうか?
そんな彼の笑顔が見られなくなったのは。
本当の彼に会いたい。
そう思ってしまうほどに、私は彼を忘れる事は出来ていなかった。