ん?


匠くん、顔が少しだけ赤いような……。


気のせい?


それとも……。


「……好きな女を苦しんでるところを見たくないから」


“好きな女”?


それって……まさか、私のこと?


心の中でそうつぶやいた直後、ある出来事が頭の中でよみがえった。


匠くんが風邪をひいた日のことだ。


熱にうかされたせいかどうかはわからないけれど、匠くんはベッドで寝転がったあと、私を自分の近くに引き寄せてこう言った。


『……俺だって、愛海のことが好きなのに』


本当に好きなのかと聞いたら、匠くんは『嘘つくわけないじゃん』と言ったんだ。


そして、続けてこう言った。


『俺、愛海しか好きになったことねぇし』