ボソッとつぶやかれた、薫くんの言葉。


あぁ、そういうことね。


薫くんが手を差しだした意味がわかった。


私たちがはぐれてしまわないようにするためだ。


だけど私は、同世代の男の子と手をつないだことが一度もない。


こ、これは手を差しだすべきかな。


迷いに迷っていると、薫くんが強引に私の手を引っ張って、歩きだした。


そのせいで、止まっていた体が前方に倒れる。


えっ、ちょっと薫くん!


「ね、ねぇ、薫くん!」


「…………」


「薫くん……?」


な、なんか怒ってる……?


私の視界に入った薫くんの横顔は、なぜか怒っていた。


なんで怒ってるんだろう。


不思議でたまらない。


怒っている様子の薫くんと、疑問だらけの私を見て、園内のお客さんたちが騒いでいる。