「いや、間違いという事は……」

「そうですか? 父の言葉が足らなかったのかもしれませんが、幸子は慣れない学校で心細いと思うんです。だから僕は、この子の面倒を見たいと思ってるんですが、クラスが違ったのでは困るんですよね」

 俺は学園長を怒鳴り付けたい衝動を無理矢理抑え、極力穏やかな口調で言った。すると、

「なるほど。すぐに変更しなさい」

 と理事長が学園長に言い、俺は内心ほくそ笑んだのだが、

「それは出来ません。規則ですから」

 と、学園長は言いやがった。

「うちにそんな規則があるのかね?」

「はい。我が校だけではありませんが、近しい関係の男女は、同じクラスにしないという、内規がございます」

 くそっ。あの噂は本当だったのか。つまり、付き合ってる男女は、殆ど同じクラスになれないという……

「なんとかならんのかね?」

「それは何とも、示しがつきませんので。それに、3組には元生徒会長の神徳君がいますから、幸子さんの指導は、彼に任せれば大丈夫かと」

「おお、彼か。それなら心配はいらんだろうな。村山君、それで勘弁してくれないかな?」

 そこまで言われたら、さすがに俺も引き下がるほかなく、

「彼なら僕も安心です。わがままを言ってすみませんでした」

 と言い、理事長室を出た。

 くそっ。よりによって、あいつかよ。
 四葉グループの御曹司、神徳直哉。元生徒会長で、俺の唯一にして最強のライバルだ。

 これはやりにくくなるな、と俺は思った。