私が尊人様に正式に認めてもらってからは生活が少し変化しました。


というのも…




カチャカチャカチャ


よし、これで台所は終わり。


次はもうないけど何かあるかな？


そう思ってキョロキョロしていると尊人様の声がが私を呼んだ。


すぐ行かなくては！と足跡に気をつけながら部屋に急ぐ。


トントン


｢どうなさいました？｣


｢暖かいお茶と湯のみをそこの縁側に二つ用意してくれ。｣


｢？はいかしこまりました。｣


湯のみを二つ？


お客様が来る予定でもあったかな？


そう思いながら用意をして縁側に持っていくと尊人様はもう座っておられた。


少しお待たせしてしまったか…


｢尊人様、遅れて申し訳ありません。

こちら茶と湯のみです。｣


｢いや、今出たところだったから丁度いいよ。

ありがとう。｣


｢いえ、こちらこそありがとうございます。｣


私は仕えさせてもらうだけで頬が緩んでいたが、

お礼を言って貰いもっと緩んでしまった。


｢では…｣と立とうとすると尊人様に止められ、


｢これはお前の分だ。｣


と湯のみを貰ってしまった。


｢え、あの、ですが従者が主人と一緒というのは…｣


｢いいから。付き合え。｣


私が言い終わる前にそう言われてしまった。


主人にそう言われては従う他ない。


｢ではお邪魔します。｣


そう言い尊人様の斜め後ろになるように正座した。


｢並ばないのか？｣


｢私は傍仕えですので…｣


そう言うと尊人様は｢そうか｣と少し頷きお茶を啜った。


私もそれに習い少し飲み尊人様を見た。


尊人様は庭を見ていた。


｢和風で、もっと風情を感じるものがいいな。｣


｢分かりました。

そのように仕上げます。｣


｢ん。

…

…飯は全部美味しいが、

おひたしは後二種類は欲しい。｣


｢はい。

そのようにしますね。｣


｢それから…｣



尊人様は好みを教えてくださったり、

逆に質問して下さったり、

私が仕事をしやすいように教えてくださいました。


従者にこんなに寄り添って考えて貰えるなんて私は幸せ者です。


この一件以来、何かして欲しいことなどあると縁側でお話するようになりました。


勿論仕えている時間は全て好きですが、

この時間が、

私にとって大切なものになったのは言うまでもありません。