恵那ちゃんが乗る車椅子を押して、ICUを出る。



エレベーターホールで到着を待つ間、恵那ちゃんから私に声がかかった。



「梨央先生?」



「ん?どしたの?」



「私のこと、見捨てないでくれて、ありがと。」



そんなことを言われると思っていなくて、思わずマッキーと顔を見合わせる。



「何言ってるの、当たり前でしょう?」



車椅子の横に膝を付き、恵那ちゃんと視線を合わせる。



「だって、私…、梨央先生一生懸命治してくれたのに、あんな…」



恵那ちゃんの声が震えている。



「うん、わかった。その話は病室着いたら聞かせてくれるかな?」



声が自然と優しくなった。



「けどね、先生は恵那ちゃんにすっごく感謝してるんだよ。」