『さっきまであんなに積極的だったじゃないですかっ。“君の瞳は綺麗だね、眼鏡をかけているなんてもったいないよ”って。あんなこと言ってくれたの、先輩が初めてです!』
『えええ! 僕そんなこと言いましたか!?』
『……嘘っ、覚えてないんですか!?』
『僕がそんなこと言えるわけがないじゃないですか!』
『最低っ! 乙女の心をもてあそぶなんて!』

 そしてそばにあった専門書を道川佐央里は浩太郎に投げつけ、それが見事に浩太郎の額に命中し、道川佐央里は泣きながら研究室を飛び出して――

 後に残されたのは、浩太郎が研究室に居づらくなるばかりの「噂」だったらしい。