あの日、浩太郎が爆睡してしまった後、ドルチェを食べながらのんびりと浩太郎が起き上がるのを待っていただけ。

 途中でスタッフが心配そうに様子を見に来たけれど、誰かに迷惑は掛かっていない。

 よくお酒が入ると、他のお客さんや店員さんに絡んだり、大声でわめいたり、嘔吐したりと周囲に被害を及ぼすタイプの大人は男女限らず見かける。

 でも浩太郎はそうではない。

 ただ――人格が変わるだけ。


 それも、私を思いっきり溺愛して甘やかしてくれる王子様に。


「ねえ、酔ってたときの記憶ってあるの?」

 一番気になることを、私はやっと切り出した。まだこの点については、確認できていなかったのだ。

 覚えていないとしたら。

 それは、結構大変なことだ。

 だって、いくら理系の、男の多い環境で育ってきたとはいえ、飲み会なんかに女性が一度もいたことがない保証ってない。これからも、この先も。

 もしも浩太郎が他の女性に「あのキャラ」を出していて、本人がそれを覚えていないとしたら……。

 浩太郎の返事は――。