サクラは自分で頭の前の方の髪の毛を整える。

俺が後ろを整える。

サクラが楽しそうに鼻歌で歌うと、俺まで楽しい気分になる。

「おし出来たぞ」

「さんきゅー」

いきなり振り向いたサクラは、俺の頬にキスをした。

「えへへ。お礼のちゅーね」

頬を赤らめながらそう言った。

いたずら好きなサクラらしい。

お礼もしたいし恋人っぽいこともしたい。

でも恥ずかしいんだ。

そしてサクラも俺も、その恥ずかしさを共有して、楽しんでいるのも事実だった。

この時、誰もいないこの住宅街は、俺たち二人の世界だったに違いない。