「泣きそうだよ?」

「俺が?」

「うん」

まぶしい。

男としての衝動がふつふつとわいてくる。

「久しぶりだな。ヒロちゃんの隣」

「そうだな」

「相変わらず相づちしかしてくれないんだ?」

口調はすねていても、笑顔は崩さなかった。

「なんか嬉しそうだね。さっきとは大違い」

顔に手を当てる。

俺は今、嬉しそうにしているのか?

なぜだろう。

なぜなんだ。

わかっているくせに。

隠す必要もないくせに。

「いつの間にかヒロちゃんが遠いところにいた」

「いつの間にかサクラが離れて行った」

サクラの発言に疑問を持たないまま口から出た言葉。

「私はずっと待ってた」

サクラの目は力を宿して俺を見つめていた。

そうだった。

最初にサクラを突き放したのは……俺。

サクラの口から迷惑だと言われたことなどない。

離れたのは自分。

だって意識してしまうから。

サクラの存在が、俺には大きすぎたんだ。