6.本当は…

「瑠依、もう我慢しなくていいんだよ。」
転入生のその言葉に私の涙腺は崩壊した。
「瑠依が苦しんでるの、本当はずっとわかってたんだ。でも、助けてあげれなくてごめん。」
ずっと…?
「瑠依はいじめられてるの?」
「うん」
「いつから?」
「入学して一週間経ってから…」
と私は今までのことを全部転入生に話した。
なんでこんなすんなり話しているのか自分でも不思議なくらいスラスラと話していた。
途中で言葉に詰まって話せなくなった時は背中をさすってくれた。
『大丈夫だよ』
って言ってくれてるみたいで安心した。
一通り話し終わった時、私も転入生も泣いていた。
「辛かったな、話してくれてっ…ありがとう。」
「話、聞いてくれてありがとう」
いじめられてるって話したのはお母さん以外に初めてだった。
私、ずっと誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
だって今、少し気持ちが軽くなっているから。
「瑠依はさ、一ノ瀬さんとふつうに仲良くしなよ。」
「ダメっ!そんなことしたら叶恋がいじめられることになる。そんなの私、許せない。」
「でも、今のままだったら一ノ瀬さんは勘違いしたままだよ。ちゃんと話してあげないと一ノ瀬さんが可哀想。」
たしかに。
今何も知らない状況で私は叶恋を傷つけているのは事実。
「ちゃんと話してあげな。一ノ瀬さんならわかってくれる。瑠依の友達なんでしょ?」
「うん」
叶恋は私の友達。
大切で大好きな友達なんだ。
「ありがとう。私、頑張るね、転入生のおかげ。」
そう言うと転入生は少し不機嫌な顔をした。
あれ?私なんかしたっけ…?
「ははっ、いつまで転入生?俺が転入してきたの4ヶ月も前の話なんだけど?」
あぁ、そういうこと。
今は8月。
たしかに彼が転向してきたのは4ヶ月も前の話。
「じゃあなんて?」
「洸輝って呼んでよ。」
「洸輝、ありがとう。」
「どういたしまして、これからもなんかあったら俺に相談してよ?」
「いいの…?」
「当たり前でしょ、俺と瑠依は友達なんだから。」
私と洸輝がお友達?
でも、友達作ったらまた傷つけちゃうかもしれない。
叶恋を、傷つけてしまってから私は学んだ。
友達を作って傷つくのはもう嫌だ。
それにまた洸輝がいじめられたりしたら?
私のせいでまた友達を傷つけるんだよね。
「瑠依、俺を傷つけるとか思ってたらそんなこと気にしなくていいんだよ、俺が瑠依と友達になりたいんだから。ね?」
「うぅ…こっ、きぃ〜」
私は泣き出した。
「うわっ、えっ、なんで?なんで泣くの?!」
「だっでぇ〜うれじぐで…ぐずっ…」
「はははっ、瑠依泣くな。」
ーポンポン
洸輝は私の頭を撫でてくれた。
やっぱりなんか、洸輝といると落ち着いた。
「この間…助けてくれたのにありがとうも言わずに帰ってなんて言って、ごめんね。」
「瑠依…結構傷ついたんだけどな〜」
「だよね…ほんと、ごめん」
「嘘嘘、気にしてないから大丈夫だよ」
「うん、ありがとう。」
私、なんか今日は素直になれてる。
これも、洸輝のおかげかな?
「洸輝、ありがとう」
「ん、なにが?」
「いろいろっ!」
「いろいろってなんだよ」
「内緒〜」
意地悪をしたら洸輝に頭をクシャってされた。
私、笑ってた。
洸輝、本当にありがとう。