4.楽しかった

今はお昼休み。
相変わらずイジメのやまない毎日。
私の毎日は変わらないんだ。
でも、変わったことがひとつ。
「瑠依、次移動だよ?」
「あっ、叶恋待って、今行く!」
そう。
私と一ノ瀬さんはあれから仲良くなった。
瑠依、叶恋、と名前で呼び合うくらいに。
私が嫌がらせをされたりすると他の子にやめるように促してくれる叶恋。
それでもいじめはやまない。
でも、叶恋が味方でいてくれるから。
私は少し頑張れる。

「じゃあ2人1組でペアを組んでくださーい」
出た。
でも今の私には叶恋がいるから。
「瑠依!やろっ?」
「うん!」
私達は2人で体育の活動をしていた。
今日はバスケットボールでパス練習をした。
私も叶恋も楽しくバスケをした。
「じゃあこれで終わります。片付けはちゃんとすること。」
「「はーい」」
みんながやりたくない片付け。
いつもは私の仕事。
「神崎さーん、片付け、よろしくね?」
「ちょっと、それはみんなでやればいいじゃん。なんで瑠依に頼むわけ?」
と叶恋がフォローに入ってくれた。
でも
「叶恋もなんでこんなやつの味方してるわけ?急にいい子ぶってんの?お前も見て見ぬふりしてたんだから同罪だろ」
私のせいで叶恋にまで迷惑をかけてしまっている。
「私がやる、だから叶恋のことを悪く言わないで」
「瑠依…」
「大丈夫。だから先戻ってて?」
私の一声でみんな教室に戻ったみたいだった。
「はぁ、やるか」

作業を初めて10分…
「あっつぅ。」
今は夏。
こんな暑い体育倉庫にずっといたら熱中症になって倒れてしまう。
一旦休憩をしようとドアに手を掛けると…
「嘘…」
鍵がかかっていた。
うちの学校の体育倉庫は外からしか鍵の開け閉めをすることは出来ない。
てことは誰かか気づいてくれるまで私は外に出ることが出来ない。
まって。
このままだったら熱中症で倒れちゃう。
どうしよう。
「誰かー!誰かいませんか?誰かっ」
「ぎゃははははは、だっさー、簡単に引っかかってやがるよ。バカじゃん。」
外からはいじめてる子達の声が聞こえてきた。
やっぱり。
完全にハメられた。
「お願い、あけて…私、死んじゃう。」
「はぁ?知らねーよ、お前が死のうがなんだろうが私たちに関係ない。てゆーか、死んだ方がいいんじゃん?」
死んだ方がいい…?
「あんた目障りなんだよ。いつも、いつもいつもいっつも。私の邪魔ばっかり。ほんと迷惑。まじうざい。あんたがいなければ。あんたがいなければっ」
そう言い放ったのはいじめの主犯の片桐さん。
片桐さんは叶恋と仲がよかった。
でも、叶恋が私をかばったことで2人は仲が悪くなってしまった。
わたしがいなければ…?
「叶恋と仲悪くなったのだってあんたのせいだろ。あんたが…あんたさえ居なければ。」
私のせいで叶恋と片桐さんの友情を壊してしまったのは事実。
「このまま叶恋と仲良くするつもりなら叶恋をいじめるから。叶恋がいじめられるのが嫌だったらあんたが叶恋から離れて。」
「わかった。わかったから、叶恋のことはいじめないで。お願い。」
せっかく仲良くなったけど…
私のせいで叶恋がいじめられるのは耐えられないから。
私はまた前の生活に戻るだけ。
叶恋と、仲良くできたのはすごく楽しかった。
一緒にお買い物だっていった。
帰りに寄り道だってした。
今までだって耐えてきた。
「それで仲良くしたら…わかってるよね?」
「大丈夫、叶恋を守るためなら大丈夫。」
「くだらなっ、行こ。」
「あっ、待って、鍵開けて…はぁ…行っちゃった。」
さてと。
私はどうしよう…
脱出口はない。
スマホもない。
気付いてもらえる方法もない。
私このまま死んじゃうのかなぁ…
でも、誰からも必要とされてないならそれでいいのかも。
死んだところで誰も悲しまない。
死んだところで誰も気づかない。
死んだところで…
『じゃあ2人で頑張ろう。悲しくなったら空を見よう?そうすればキミも僕も笑顔になれる。はい、約束ね?』
あ、あの男の子。
私、約束守らなくちゃ。
ダメだ、死ねない。
でも…
暑さで意識が朦朧とする。
誰か…きてよ…
もう、無理…
「瑠依!」
誰かの声が聞こえたのと同時に私の意識はなくなった。