「あはは。大丈夫?ごめんね、急に声かけてビックリしたよね」
「……」
普通なら思いきり笑われるかバカにされるはずなのに、手を伸ばしてくれた成瀬くんに思わず心臓が跳ねる。
私って、もしかして凄くミーハーな人?
「あれ、もしかして動けない?お姫様抱っこしてあげよっか?」
「け、結構です!」
そんなことされたら周りの女子に何をされるか!
今でさえ、凄く睨まれているのに。
「ねぇ、もしかして先約って綾瀬さん?」
「ありえないでしょ。声かけただけじゃないの?」
「それだけでもウザいけどね」
微かに聞こえる鋭い女子の視線に乗った非難の声。
やっぱり私みたいな地味女は、人気者と関わっちゃいけない存在なんだ。
成瀬くんがどれだけ女子に私のことをいじめるなと言ったって、影で悪口を言ったり嫌がらせをしたりする。
それが、全ての答え。現実。
誰とも関わるなっていう、神様からの合図。
「か、帰るね」
「ちょっと待って」
帰ろうとしたら、成瀬くんに腕を掴まれた。
何で?成瀬くんだって分かっているでしょ?