成瀬くんってば、すぐ人をからかうような発言するんだから。
「ごめんごめん。そんな用事で来たんじゃないよ」
トントンと頭を撫でる成瀬くん。
ほんと、私ってつくづく桐ヶ谷くんが好きなんだな。
男の子に頭撫でられたりしたら嬉しいはずなのに、成瀬くんには何も思わない。
「叶斗の所に行く気がないなら、俺本気出しても良い?」
「え?」
成瀬くんの言葉の意味が気になって、振り返ると
「な、成瀬、くん?」
腕を引き寄せられて、抱き締められた。
ど、どういう状況なの?何これ。
何で成瀬くんに抱き締められているの?
「分かりやすいのに鈍感なんだね。正にヒロインって感じだよ」
耳元で囁かれて、思わず心臓が跳ねる。
な、成瀬くんこんなに……カッコ良かったっけ?
ダメ、だよ。桐ヶ谷くんが好きなんだから、他の男の子にドキドキしちゃ、ダメだよ。
「光凛ちゃん、忘れないで。辛い時、俺が傍にいてあげるってこと」
ドキッ
何で……さっきは何も感じなかったのに、今は凄くドキドキする。
こんなの初めてだから、どうすれば良いのか分からないよ。