桐ヶ谷くん?




「あ、目覚ましたんだな」




ゆっくり顔を上げて、欠伸しながら言う桐ヶ谷くん。
何だろう。特別とか言われたからかな。
無駄にドキドキする。





「大したケガじゃなくて良かったな」





うん、あの、それは確かに良かったんだけど。




もっとあるでしょ?気付くことが。
ほ、ほら手繋いだままだし。





「何だよ。しけた顔して……悪い」





ようやく繋いだままの手に気づいてくれて、そっと離された。




顔赤くしないでよ。期待しちゃうし、ドキドキが激しくなっちゃうよ。




「す、すぐ退院できるってよ」




「そ、そう」




何よ、この雰囲気!
気まずい!恥ずかしい!




「じゃ、じゃあ帰るわ。もう遅いし」




「あ、うん。ありがとう」





桐ヶ谷くんが病室を出て行くと、途端にとても静かになる部屋。




こんな広い部屋に一人って、寂しいかも。もし目が覚めた時一人だったら、凄く心細かっただろうな。
だから、桐ヶ谷くんは傍にいてくれたのかな。目が覚めた時、寂しくならないようにって。
でも、今寂しくなっちゃったんだけどね。





ガラガラ




「あ、良かった!無事だったのね!」




「お母さん?」




病室のドアを勢いよく開けたのは、お母さんだった。