「ん……」
目を開けたとたん、飛び込んで来たのは真っ白な天井だった。
同時に鼻を刺すような消毒液の匂い。
「病院?」
私、どうして……。
あ、そうだ。
愛依と取り巻きの女子達に、殴られたんだ。
それで、桐ヶ谷くんが助けに来てくれて……。
あれ、桐ヶ谷くん?
ふと、ベッドの横でベッドに顔を埋めるようにして眠っている桐ヶ谷くんに気が付いた。
「ようやく目を覚ましたみたいだね」
桐ヶ谷くん、じゃない誰か男の人の声がした。
どこかで聞いたことがあるような気がする。
「相当殴られたみたいだね。二時間ほど意識を失っていたよ」
声のした方を向くと、ベッドの横の椅子に座っている白衣のおじさんの姿があった。
桐ヶ谷くんのお父さん?
「叶斗のやつ、ずっと手を握っていてな。大丈夫だと言っても、離れようとしなかった。君は叶斗にとって、よっぽど特別な存在らしいな」
特別?
私が桐ヶ谷くんの?
確かに桐ヶ谷くんは眠ったまま、私の手を強く握っていた。
二時間ずっとこのままってこと?
桐ヶ谷くん、ずっと傍にいてくれたの?
「どうか離れないでやってくれ。叶斗を変えられるのは君しかいない」
優しい笑みを浮かべて、桐ヶ谷くんのお父さんは病室から出て行った。
あの人、勝手に怖いイメージだったけど凄く優しい人だ。
桐ヶ谷くんのこと、本当に大切に想っている。
ビクッ
繋いでいた桐ヶ谷くんの手が小さく動いた。