やばっ。
気になりすぎて、つい見つめちゃったよ。




「何?俺に惚れた?」
「は、はぁ!?そんなわけないでしょ!」





この男、何言ってんのよ!





そ、そんなこと言われたら……。





「冗談だよ。お前が俺に惚れるわけねぇしな」






ズキッ





桐ヶ谷くんがどういう気持ちでそんなことを言ったのかは分からない。
でも、私の胸は確かにズキッと何かが刺さったように痛くなった。





それに、桐ヶ谷くんがちょっと悲しそうな顔をしたのは気のせい?





チンッ




『五階です』





エレベーターが到着の音を告げ、ゆっくりと扉が開いた。
一階はそうでもなかったのに、五階に着いたとたん鼻を刺すような消毒液の匂い。
結構きついな、これ。





でも、桐ヶ谷くんは全然堪えてないみたいで真っ白な廊下をすたすた歩いて行く。
看護師さんや白衣を着た男の人(多分お医者さん)が、桐ヶ谷くんに挨拶して行った。
他の人とすれ違っても素通りなのに、どうして桐ヶ谷くんには挨拶するんだろう。





「悪い。ちょっと待ってて」






『第一診察室』と書かれた部屋に、桐ヶ谷くんは入って行った。
待っててと言われた私は、すぐ近くにあったベンチに腰を下ろした。
大学病院なのかな。かなり広い。





でも、一年以上も通っているのに学校の近くにこんな大きな病院があるなんて知
らなかったな。



「桐ヶ谷先生!村上さんの件ですが……」