結局、桐ヶ谷くんは準備期間中も文化祭当日も来なかった。
どうして受付やりたいなんて言い出したのか、聞きたかったのに。
「桐ヶ谷くん来なかったねー」
「桐ヶ谷くんいないとやる気出ないよー」
クラスの女子達が口々にそう言った。
でも来ない方が良かったかも。
受付一緒にやっているとこ、女子に見られて逆恨みされたら怖いし。
「何言ってんのさ。俺がいるじゃん」
成瀬くん、またあんなこと言っている。
やっぱり、あのチャラさは苦手かも。
「そうだね!」
「成瀬くんがいれば、もう何もいらないーい!」
桐ヶ谷くんが来なくて残念がっていた癖に、成瀬くんのその言葉で女子達はやる気が出たみたい。
結局、イケメンなら誰でも良いのかなって思っちゃう。
「光凛」
「っ!め、愛依!」
突然後ろから声が聞こえて、体がびくつく。
そこには真剣な表情を浮かべる愛依がいた。
文化祭の準備が始まった初日から全然話してくれなかったから、何だか気まずい。
「光凛はさ、何とも思ってないんだよね?桐ヶ谷くんのこと」
「そ、それは……」
上手く言葉が出て来ない。
何とも思ってない?
じゃあ、どうして愛依と桐ヶ谷くんが仲良くしていたら、あんなに苦しいの?
思わず泣いちゃうほど辛くなったのはどうして?
「う、ん。何とも思ってないよ」
そう言うしかなかった。